癒しの香木

乾燥させたクロモジを前に岩崎智恵さん

山の恵みの研究所

山の恵みの研究所を主宰する岩崎智恵さん(50歳)を奥大山のアトリエに訪問した。岩崎さんは、尼崎で13年ほど夫婦で雑貨屋を経営していたが、ひょんなことがきっかけで竹に興味を抱くようになり、より自然とともに循環する素朴な暮らしや仕事を求め、移住先を探すようになった。そんな中、友人から誘われた鳥取旅行で、たまたま立ち寄った奥大山の美しい大自然と山の美味しい水の魅力に惹かれ、さらには、自然を中心とした地域資源を活かす特産品の取り組みや環境保護につながる竹の活動など、自身のやりたかった事と地域おこし協力隊の募集のタイミングなどが見事にマッチングしたことで、その後、導かれるようにして、トントン拍子に移住が決まったという。協力隊の竹林整備や竹炭作りなどの活動をする中、奥大山に群生するクロモジという植物に出逢い、その魅力にはまって夢中になって研究をしはじめたのだそうだ。

クロモジ

癒しの香木

クロモジとは、 クスノキ科の落葉低木で枝葉がとても良い香りがすることから、日本古来より「癒しの香木」などと言い伝えられている。現在では、和菓子の爪楊枝として見かけることが多い黒文字は、その名のとおり、枝に黒い文字のような模様があることからその名がついたという。 その枝を煎じて飲むと冷え性の改善や 胃腸に良いということで、山の民にも昔から愛用されてきた。

リナノールという成分が多く、和のローズウッドとも呼ばれるその香りは、石鹸や香水、化粧品などにも幅広く利用されているほど、ほんのり甘く爽やかで 豊かな森を思わせるような なんとも魅惑的な香りがする。心を深く落ち着かせるリラックス効果が非常に高いと言われ、近年では、脳神経に関わる認知症や不眠症、アルツハイマーや記憶障害など 医療の分野でも研究されているという。また芳香だけでなく、殺菌や抗菌、消炎作用もあることから、肌荒れや水虫、強いてはペット医学の方面でも 穏やかな作用でいて優れた効果が期待されるとして、クロモジの蒸留水が注目されてきているそうだ。

 そんな様々な優れた効能を持つ 黒文字が養命酒の主成分であったことを 知らない人はまだまだ多いのではないだろうか。 養命酒からクロモジ入りののど飴が発売され、昨年猛威を振るった インフルエンザの予防対策としても注目を浴び、特に冬の季節にはとても人気が高いそうだ。酒によし、香水によしとクロモジは可能性をもった植物であり、林業再生の一手として頭に入れておいてよい植物ではないか。

手付かずの豊かな自然に囲まれて

岩崎さんは、「奥大山は、手付かずの豊かな自然に囲まれて、美しい空気と飲むだけで身体の細胞が喜ぶような水が存在しています。そんな純粋な空気と水のある中で暮らすことが、どれほど人間にとって自然で必要なことであるのかが暮らしてみて改めて実感することができました。私たちは、そんな大自然の美しさを大切に取り入れながら、少しでもその恩恵にお返しできるよう暮らしの仕方を工夫していきたい」と話しています。また、「小さくてもいいので、日々の暮らしを助け合えるコミュニティづくりと健康的で幸福度の高いまちづくりを目指したい。夢はこの地の植物の研究をしながら、クロモジ工房や竹炭温熱ベッド、オフグリッドでセルフビルドのサロンを建てたり、森の中で木々や川や鳥などの自然の音に耳を澄ませれるような素朴で小さなリトリートの場を作りたい。そして、自然の中での暮らしの知恵をみんなでシェアしたり、焙煎や蒸留、ヨガやマッサージなど様々なワークショップなどを開催したりして、楽しい輪を広げていきたい」と話しています。

● 山の恵みの研究所 / ∞chi (EICHI)

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writer : 「奥大山Life」編集長 斉藤俊幸